top of page

開催レポート:【ICPハッカソン2025優秀表彰式】優秀者交流会

  • 執筆者の写真: Sho T
    Sho T
  • 49 分前
  • 読了時間: 10分

概要

---

2025年1月〜3月に ICPハッカソン2025 が開催され、全116の提出(Wave1〜4)があり、大変活況でした。その中でも特に優秀な提出・作品をされたDeveloperの表彰式&交流会を、2025年4月19日に行いました。


※表彰式資料はこちら


様々な提出物は大まかに上記のような分類でプロットできました
様々な提出物は大まかに上記のような分類でプロットできました


Wave1, 2ランキング

---

Wave1では、 全41提出のうち7位 までが表彰されました。

ICPの魅力的なコンテンツ制作として裾野を広げる内容となっております。

各提出物の詳細は こちら にございます。


Wave2では、全47提出のうち8位 までが表彰されました。

ICPを活用したアイディエーションとなっています。

各提出物の詳細は こちら にございます。



Wave3

---

Wave3はサンプルキャニスターデプロイの提出でした。

こちらはランキングではなく、全22提出のうち特に丁寧に記載された内容(チュートリアルドキュメント相当)や、特殊な角度から挑戦された内容の 5つ が紹介されました。


Wave4

---

Wave4は、 全28提出のうち12位 までが表彰されました。

今回のハッカソンの集大成として、19のメインネットデプロイのMVPが創出されました。


洞察・考察

---

今回のハッカソンで、ICPの特徴やユニーク性が以下のような観点で浮かび上がってきました。


  1. web2-web3ゲートウェイ/通信(DID/認証/VCs/Vetkeys/分散型アイデンティティ基盤)

  2. ガバナンス/マネジメント(DAO/組織/権利承継&相続/投票/アクターネットワーク)

  3. 金融/価値流通(DeFi/決済/トークン流通/評価/ポイント)

  4. ソーシャル/AIエージェント(DeAI/ソーシャルメディア/コミュニケーション)


web2-web3ゲートウェイ/通信(DID/認証/VCs/Vetkeys/分散型アイデンティティ基盤)

~~~

今回のハッカソンを通して、infinith4氏の開発した、II(Internet Identity)とvetkeysを組み合わせた安全なパスワード管理システムや、yasuo氏が開発したvetkeys暗号化で鍵管理なしの暗号通信ライブラリ + クロスプラットフォーム認証等、web2-web3の横断的ゲートウェイとしてのポテンシャルが感じられました。


実際に、yasuo氏が開発された内容は、電通総研のTrusted Web実現のためのVCsプラットフォームでの実装予定であり、エンタープライズ採用の可能性も非常に高い領域です。特にデジタルアイデンティティ分野として金融機関やサプライチェーン管理への応用が検討されており、5月下旬にもこの内容はICP Japanと電通総研でエンタープライズとデベロッパー向けに企画が展開される予定です。

※参考: httpsアウトコールで、ICPのCanisterから直接HTTPリクエストを外部サービスに送信できる機能で、ブリッジを介さずにweb2サービスと通信可能です。従来のブロックチェーンでは困難だった「外部世界との直接通信」を実現しています

※参考: vetkeysはE2E暗号化のための鍵管理システムとして、yasuo氏が説明したデジタルアイデンティティウォレットで活用されています。AES暗号鍵をvetKeysで暗号化してクラウドに保存し、IIログイン時のみ復号化可能にするシステムがMVPとして実装されました

これは、将来的に運転免許証などの資格証明書をはじめ、会員証など、根本的なアイデンティティに紐づくデータとのUXを大きく変える革命的なことです。

例)

  • 複数の会員証やポイントカードが1つのデジタルウォレットに統合され、物理カードが不要に

  • ユーザーは必要な証明書のみを選択的に開示でき、過剰な個人情報共有を回避

  • 企業側は「このデジタル証明書を持っていますか?」と問い合わせるだけで、適切な会員証を自動的に参照

  • ポイント付与もデジタル証明書として記録され、不正利用を防止しつつ透明な管理が可能



ガバナンス/マネジメント(DAO/組織/権利承継&相続/投票/アクターネットワーク)

~~~

ICPは分散型クラウド環境であるため、ソフトウェアもスマートコントラクト(Canister)にデプロイできます。これにより、従来のクラウドインフラを超えた「デジタル公共コモンズ」の実現基盤として注目できます。Canisterは独立・自律したコンピュータユニットで、このCanisterにアプリケーションやプラットフォームを構築することで、特定の企業や組織に依存しない真の公共インフラを創出できる点が革新的です。


yota氏の学術論文プラットフォームMVPも、上記の背景でデジタル公共的PFとしてICPに構築されました。学術知識を特定の商業出版社や国家の影響から独立させることを目指しており、アメリカの学術界が直面している自由への脅威に対抗する手段として位置づけられています。Canisterはアクターネットワーク的な性質を持ち、それぞれが独立して動作しながらも連携できる特徴があります。TM氏のプロジェクトではこの特性を生かしパーソナルアシスタントや家族記録継承システムをMVPとして構築。個人データの管理とサービス間共有を自己制御できるシステムとして、データ主権とプライバシー保護の両立を目指しています。


特に注目すべきは、公共システムの継承可能性です。Canisterのオーナーシップ移転機能により、開発者がいなくなった後もシステムを存続させることができます。これは従来のクラウドサービスでは実現困難だった「永続性」をもたらし、長期的な価値を持つシステムの構築を可能にします。

joo00氏の相続管理システムは、デジタル資産の承継という現代的課題に挑戦するプロジェクトとしてICPにMVPを構築されました。シャミア秘密分散法を応用し、鍵情報を5人に分散共有、そのうち3人の合意で復号化できる仕組みにより、「死亡」というデジタル世界で定義が難しい状態をオンライン上で確定できる革新的なソリューションです。さらに生前に拒否権を持つことで、不正な資産移転を防止する安全機能も議論されました。


なお、ICPのガバナンス機能は、DAOからエンタープライズまで幅広いニーズに対応します。例えばKinicのICP上の分散型検索エンジンでは、完全なDAOガバナンスを採用。プロポーザルを投げてネットワークのステークホルダー(不特定多数のネットワーク参加者)の承認を得るプロセスにより、民主的な意思決定を実現していると、Clankpan氏により共有されました。

一方、より組織的な意思決定が求められる場面では、OrbitというICP上の仕組みが注目を集めています。これはマルチシグの概念を発展させたガバナンスシステムで、企業や組織内の社員・部署単位で細やかな権限設定を行い、特定多数によるガバナンスでCanisterを運用できるという仕組みです。DAOほど完全な分散化ではないものの、エンタープライズに適した透明性と効率性のバランスを実現しています。


金融/価値流通(DeFi/決済/トークン流通/評価/ポイント)

~~~

ICPでは上記によりソフトウェアを分散型でホストできることに加え、Chain-Fusion技術(他チェーンやweb2に仲介なしでダイレクトトランザクションが送れる)により、異なるブロックチェーン間でも価値の移転が可能な設計になっている点です。

ICPのCanister技術を活用したtheoman42氏のトークン配布システムMVPは、従来の金融システムの制約を乗り越える画期的なソリューションです。このシステムではスマートコントラクトにデータを登録し、定期的な自動支払いを実現しています。(Chain-Fusion技術により、異なるブロックチェーン間でも価値の移転が可能な設計にもできるポテンシャルがあります)

またtheoman42氏は、「Party」と名付けられた分散型カジノプロジェクトをICPに構築しており、このシステムの最大の特徴は「真ん中に仲介者がいない」完全なる自律型設計にあります。すでに1.5億円以上の賭けが行われており、実用段階に達しています。

技術的には、ICPのCanister上に実装されたゲームロジックが、透明性と公平性を担保しています。乱数生成においては、ブロックチェーンの署名や検証プロセスを活用した安全な仕組みを採用可能です。これにより、オペレーターによる不正操作の可能性を排除しています。さらに将来的には、Chain-Fusion技術によって様々な暗号資産での賭けにも対応できる拡張性を持っています。オープンソース化された設計により、コード自体が検証可能であることも大きな特徴です。開発者が「公平に動作することを証明できる」カジノゲームは、オンラインギャンブル業界に新たな信頼性の基準を打ち立てています。


ソーシャル/AIエージェント(DeAI/ソーシャルメディア/コミュニケーション)

~~~

Xなどのソーシャルメディアアカウントで価値流通が可能な「vly(参考)」は最近、X投稿でAIエージェントにメンションすることで、トークン配布のロジックをCanisterに登録し、そのCanisterが条件を満たしたユーザにトークン配布するといった機能(vly wheel)を発表しました。このように、ICPではソフトウェアやPF, アプリケーションを分散型クラウドの上で構築し、AIエージェントさえも分散型で自律的に動かすDeAI×ソーシャルメディアのポテンシャルを広げています。


今回のハッカソンでも、複数人がこの発想を広げました。

着目したいのが、ここに「IoT×RWA」を組み合わせる発想です。

bypptech氏がMVPを構築中の、物理世界とデジタル世界の接点として「IoT×RWAガチャプロジェクト」が議論されました。このプロジェクトでは、市販のガチャにICPの認証機能を組み込み、物理的なトークンとデジタルNFTを連携させる仕組みを提案しています。

ユーザーがガチャガチャを回すと物理的なカプセルが出てくると同時に、QRコードなどを介してデジタルNFTが付与される仕組みです。これにより「推し活」などのファン活動やコレクション文化に新たな次元を追加し、物理とデジタルの両方で価値を享受できるエコシステムを創出します。

上述のソーシャルメディア×DeAIのソフトウェアでの価値流通革命に加え、IoT×RWAの要素を合流させる発想として革新的なアプローチです。


実は韓国では、「Piggycell」は、韓国国内13,000台の充電ステーションをRWAとして充電チャージユーザに対してインセンティブ(NFT)を価値分配するゲーミフィケーションにより、RWA×DePINを組み合わせています。(参考


この発想を広げると、ishiko_220氏は「NTTの老朽化チェックシステム(ユーザがカメラで写真を撮り、電柱の老朽化状況を報告し点検作業にリワードを設定することで、ギグエコノミーワーカーの参加を促すプロジェクト 参考)でも同様にICPを活用できるのではないか?」との提案がありました。



ICP Japanとプライオリティグループの連携

---

今回のハッカソンの積極的な参加者及びICPエコシステムへの貢献者を含めたプライオリティグループとICP Japanは積極的にエコシステム開拓を行います。


直近では、

  • 電通総研とのデジタルアイデンティティ・VCsソリューション周りのエコシステム構築

  • チューリッヒ大学への学生デベロッパーの短期留学プログラム進行中(2名)

  • 全国でのサイファーパンクを中心とするネットワーク構築(東京-鎌倉-京都-大阪-福岡-佐賀, etc)

  • デジタル公共コモンズ, DeAI, データ主権/ソブリンクラウド等、社会課題・時代背景文脈との界隈統合

  • トークンリスティングや価値のインターネットを促進する法的かつ交渉の進行

etc


まとめ

---

今回、上記のようにいくつかのトピックスが浮かび上がりました。

特に時代背景と技術革新性が合流するタイミングを感じています。

ICP Japanではナラティブが結びつく環境づくりをしていければ幸いです。


<以下参考整理>

Internet Computer Protocolを整理すると、無数の世界中のデータセンターノードネットワークから複数のノードでサブネットを構成し、サブネットがCanisterをホストする。Canisterはアクターとして自律的で独立したスマートコントラクトとデータのコンピュータユニットとして、httpsで相互通信が可能、このCanisterがこれまでの集権的なクラウド環境のサーバの代わりに、常に状態が更新される(ステートフル)分散型のアプリケーションのサーバレスクラウド環境として新しいインターネットの分散クラウド環境となる。Canisterは相互通信ネットワークとして様々なアプリケーションを1つまたは複数のCanisterでデプロイでき、Canisterにはアプリ(機能)やAIエージェントをデプロイすることで、デジタル公共コモンズとしてマルチユーザガバナンス(Orbitなど)またはDAOで管理することもできる。そのためCanisterは個人でもエンタープライズでもは特定多数でも管理することができ、様々なユースケースを創出できる。また、CanisterからCanisterへコピーや継承/承継することもでき、どのようなネットワークとして構成するか、様々なビジネスモデルを考えることもできる。
ICPのChain Fusionは、ICP上のCanisterスマートコントラクトが他のブロックチェーンやWebサービス(HTTPSアウトコール経由)と直接通信する仕組みです。これにより、デジタルアイデンティティ、金融、ガバナンス、ソーシャルなど従来は分断されていた分野が統合され、ユーザーは自身のデータ主権を保持しながら、セキュアでシームレスな体験を享受できる未来が実現します。


 

ICP Japan

X: ​​​​​​​​​​​​​https://x.com/icphub_JP




Comments


bottom of page